著作権研究所 / 著作権の制限 32条~

  • 2001年5月28日:作成
  • 2017年12月1日:法改正の反映、個人的見解の削除(移動)

引用の場合(32条)

公正な慣行に従う場合、報道、批評、調査研究などの目的で自分の著作物に公表された他人の著作物を引用することが認められており、翻案もできます。公正な慣行とは、自分の著作物が主体であること、引用の必然性があること、かぎ括弧などで引用部分を区別すること、引用した著作物の出所を明示することです。

通常の文章引用の場合はほとんど問題は起こりませんが、引用した絵画、写真やイラストなどが本文から独立して鑑賞可能な場合、「引用の必要が無い単なる挿絵」であると判断される可能性があります。

学校・教育関係の場合(33~36条)

教育関係者・機関はその公共性から、(33~36条)で様々な特権が与えられています。著作物の教科書への掲載(33条)、教育番組として著作物(番組)を放送、独自の教育番組に他の著作物を掲載(34条)、授業に使用する目的で著作物を複製(35条)、試験に使用する目的で著作物を複製(36条)することが認められています。ただし、全て使用許諾が不要であるだけで、著作権者への通知と補償金の支払いは必要です。

35条の複製には注釈があり、宿題など家庭学習は授業に含みません。また、問題集などの複製や、録画した番組によるライブラリー化など、著作権者の著しい不利益が予想される場合は複製できません。

視覚聴覚障害等に対応する場合(37条)

2001(平成13)年の本項目作成時、著作権法には弱者救済の視点が欠けていると指摘しましたが、(平成21)年の改正でかなり改善されています。

視覚障害対応として、広く図書館や図書室などで公表された著作物を点字化、音声化、テキスト化し、デジタルデータとして蓄積、その貸出、譲渡、公衆送信も可能となりました。なお既に権利者によって点字化・音声化され提供されている場合には、この例外規定は適用されません。

かつて、一般の図書館では事前に音声化することすら認められず、来館者に対する対面朗読以外に合法的手段がなかったことを考えると、大変な進歩だと思います。

聴覚障害対応として、図書館などでも映画やテレビ番組の字幕/手話付を作成(結果的に複製)し貸出すことが認められました。なお、貸出に際し著作権者への補償金が必要で、この場合も権利者によって既に該当形式で提供されている場合には、この例外規定は適用されません。

改正前は、テレビ放送のRT字幕(インターネットのチャット機能を利用して、字幕入力者が視聴しつつリアルタイムで字幕情報を送信する)が特定の2事業者に認められるだけだったので、これも改善されたと言えます。

営利を目的としない上演などの場合(38条)

営利を目的とせず、無料または実費以上の料金を観客から徴収せず、出演者(関係者)に報酬が支払われない場合、公開された著作物を上演、上映、演奏、口述などすることが認められています。図書館や児童館の映画会、学校の文化祭などの劇や演奏、ボランティアによるお話会などがこれに該当します。

この場合でも、編曲や脚色などが行なわれる場合は、翻案の許諾を得る必要があります。同様に、使用する台本や楽譜の複製、キャラクターを用いたポスターの作成などは別途の許諾が必要で、関連する全ての許諾が自動的に得られるわけではありません

著作権が制限されるその他の場合(39条~47条)

個人の活動と39条~45条が関わる事は稀だと思われますので、割愛いたします。

屋外の彫像など美術品や建築物は46条で、彫像を彫像として建築物を建築物として複製しない、野外に恒常的に設置しない、販売目的でない、の条件を満たせば方法を問わず利用できるとされています。

自ら利用するために必要となる範囲で、プログラムの所有者はプログラムを複製・翻案することができるが、その所有権を失った場合は複製物を保持できない(47条)とあります。これは、オリジナルの破損に備えバックアップを取る、その際に必要に応じて媒体を変更したり圧縮したりする状況を想定している様です。

Web閲覧時にブラウザが作るキャッシュなど、PC上で自動的に作られるものも複製に該当するのか?と言う議論がありましたが、その問題は、適正に行われる情報処理の過程であれば著作物の複製を行うことができるとされ(47条)、認められる複製として解決しています。


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