著作権研究所 / 日本の著作権

  • 2001年5月28日:作成
  • 2017年12月1日:法改正の反映、個人的見解の削除(移動)

著作権の概要

著作権は複数の権利者の様々な権利で構成されています。著作権と言う用語は、最も広義の権利全般を指す著作権A、著作者の権利を指す著作権B、狭義の経済的な権利を指す著作権Cの3つの意味に使用されます。なお、A~Cの文字は便宜的に私がつけたものです。

著作権の概要(著作権システムの手引き、文部省学習情報課、1999年をもとに作成)
最も広義の権利全般 著作権A著作者の権利 著作権B人格権(心が傷つくのを防ぐ)公表権 (18条)無断で公表されない
氏名表示権 (19条)無断で氏名を表示・削除・変更されない
同一性保持権 (20条)無断で改変されない
狭義の経済的な権利著作権C(経済的な損失を防ぐ)複製権 (出版権1 21条)無断でコピーされない
公衆送信権その他 (22~26条)無断で公衆に伝達されない
翻案権その他 (27~28条)無断で翻案物を作成・利用されない
著作隣接権2 実演家の権利 録音物作成者の権利(最初に作成した者の権利) 放送事業者の権利有線放送事業者の権利無断で録音・録画されない
無断で録音物・録画物をコピーされない
無断でアップロードされない
無断で放送・再放送されない
無断で写真撮影されない
無断で大画面による提示をされない3

1 出版事業者に明示された唯一の権利? 2 簡略化し強引にまとめた(90~98条が適用される)。 3 通常の家庭用テレビ以外の、映像を拡大する特別の装置を指す。

著作権が守るのは著作物ですが、著作物には極めて多種多様な創造物が含まれています。創意工夫や思想感情の表現がなければ著作物にあたらないとされていますが、明確な基準はありません。また思想感情の表現の有無と無関係に、経済価値を有する場合もあり、原則的に人間の創造物は全て潜在的著作物であると考えられます。

著作物が保護される期間、つまり無断では使用できない期間は原則として、著作権Bに該当するものは著作者が個人の場合は死後50年、法人の場合は公開から50年、映画の場合は70年(2004年改正)、隣接著作権に関しては行為が行われてから50年となっています。ただし原則であって例外や特例があるので、関係団体に確認する必要があります。

翻案が分かりにくいのですが、原作の小説を日本語から英語に、小説を脚色して脚本に、脚本を映画化と原作の内容(主題)を維持しつつ具体的表現方法を変えることを意味します。

放送通信関係法令では『不特定の場所で同時に受信可能な送信』を放送と呼んでいます。しかし、著作権法では『特定多数の場所で受信可能なもの』も放送と解釈し、インターネットも放送に含まれています。

全ての項目が『無断で~されない』と禁止事項になっているので、著作権者の許可を得ればよいわけですが、著作権者の特定には注意が必要です。著作権Cは譲渡可能な権利なので、著作者がその時点の著作権者だとは限りません。また、翻案物にも独立した著作権が発生し、録音物作成や映画化の際には隣接著作権が発生するので、原則的には関係者全員が権利者でその全員の許可が必要になります。また、美術品などの場合、現在の所有者にも権利が発生していますので、許可が必要になります。

また、許可の範囲も明確にしなければなりません。たとえ、録音・録画の許可を得ていても、それを許可なく公開・放送することは出来ません。目的の行為全ての許可をとる必要があります。

著作権侵害のペナルティ

著作権侵害は親告罪であり、その事実があって告訴された場合には、ペナルティが科せられます。

故意による侵害の場合は刑事上の制裁として、権利侵害罪、著作者の死後における人格的利益侵害罪、著作者名詐称罪、無断複製・頒布所持罪、出所不明示罪などがあり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。1999(平成11)年より法人の罰金刑の上限が1億円に改正され、ビデオやCDのコピーガードキャンセラーの譲渡と、これを業務として使用した者には罰則が適用されています。

2007(平成19)年に、個人の場合は10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、法人の場合は3億円以下の罰金に改正されました。また2012(平成24)年改正で、違法と知りながら音楽や映像をダウンロードする事、DVDをリッピング(PCへの取込み)する事が、新たに刑事罰対象となっています。

民事上は故意・過失に関係なく、差止請求権、損害賠償請求権、不当利得変換請求権、名誉回復等措置請求権などの対象となっており、著作権者の損害の補償を行なう、あるいは不当利得相当額の返還を行なわねばなりません。また、名誉の毀損が認定されれば謝罪広告掲載などの名誉回復措置をとる必要があります。


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